from Sri Lanka
to All of the World
DE BATTRE MON COEUR S'EST ARRETE/THE BEAT THAT MY HEART SKIPPED/真夜中のピアニスト
Dir. Jacques Audiard
Act. Romain Duris
2005
ロマン・デュリスの演技は素敵だった。ここまで感情をコントロールできる演技ってすごい。
言葉がわからなくても見ているだけで心のすみっこまで見えそうな演技。
彼の一見強そうだけど、すごい弱い一面を垣間見れるっていう存在が好きだ。
そんなの自然に表に出すなんて出来ない。ストーリーよりも彼の存在が際立っていた。
暴力をするような時の感情の表現を、激しいテクノミュージックで聞くことで表していた。
それが昔やっていて諦めていたピアノに触れてから、その激しい感情は練習しているピアノの曲へと
変わっていった。そこでも高ぶる感情によって弾き方が激しくなり曲は乱れていく。
彼は感情がそのまま音にでてしまう。苛立ちや緊張までもが。
抑えていた感情は結局殺意へと移り変わっていく。
このなんとも繊細で、かつ尖がった感じは彼だからできるんだろうなって思える。
PARIS, JE T'AIME
2006
18個の短編ストーリーで綴るパリを舞台にした恋?ちょっとしたエピソード。
一つ一つがパリのモンマルトンであったり、セーヌ河、バスティーユであったりして、
その地区の風景も楽しめる。
この短編をひとつずつ世界に名だたる監督達が作り上げている。
アメリカのコーエン兄弟やガス・ヴァン・サント、
日本の諏訪敦彦そしてフランスではオリヴィエ・アサヤスなどなど。
出演者も豪華!ギャスパー・ウリエル、ジュリエット・ビノシュ、リュディヴィーヌ・サニエ、ファニー・アルダン、ジェラール・ドゥパルデュー、ナタリー・ポートマンなど。書ききれん!
まっこれだけでも見てみたくなる映画。
そこに外国人監督が見たフランスのエスプリを振りまき、
一見ばらばらな18個のストーリーがなんとなくうまく繋がっているよう。
かなり実験的、やってみようって感じ。はするけれど、ひとつひとつがたった5分くらいのストーリーなのに、とっても深かったり、感動したりで監督の力量がすごく出ている。
言葉で言い表せない思いを痛いほど分からせてくれるお話の数々。
花とアリス
Dir. 岩井俊二
Act. 鈴木杏、蒼井優
2004
岩井俊二の映像は、どの映画でもほんとに美しい。
そしてそれにのっかる音楽もまた。
なんで女の子、中学から高校という難しそうな時期の2人の友情描写を、
男の監督がこんなにうまくできるんだろう?
こんなにも純粋で、恋っていうものを嫌味なく、きれいに、輝かしい、きらきらしたもののように描き出す彼の映像、ストーリーがすごい好きだ。
その純粋さ、きれいさに涙してしまった。
この映画の美しさの中にバレエという表現手段が出てくる。
バレエは映像の中でとてつもなく栄えると思う。そして、美しいって思える。
バレエカンパニーというアルトマンの映画も完璧な美とも言えるほど完成度の高いバレイを見せていた。
そしてそこには素敵な音が流れている。温度も伝わってくる。
でも岩井俊二は単に美しい世界だけを描くのでなく、そこには現実との接点を埋め込んでいるように思える。
2人の友情を生み、繋げるかのようなバレエとして、感情を表現する場としてのバレエとして。
昔の家族の思い出を、嘘の記憶として彼との記憶に置き換える。
あの楽しかった思い出を。
岩井俊二は昔の思い出をきらきらしたものとして取り出すことが非常にうまいと思う。
Love Letterや打ち上げ花火、上から見るか下から見るかのように
過去の思い出、小さい頃の純粋無垢な感情やストレートな恋を描いたら彼の右に出るものはいない。
かもめ食堂
Dir. 荻上直子
Act. 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ
2006
フィンランド=アキ・カウリスマキのイメージで暗い曇り空のヘルシンキを思い浮かべるけれど、
そこで明るいカフェ=食堂を営む日本人。なぜそこで?みたいな具体的な説明を省くことで、逆にその食堂にスポットが当てられている。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの3人がほんとに素敵。存在感ありすぎ。そこに居るべくしている主人公の女主人。-その自然な佇まいがとてもキュート!
適当に行くべきところを探してやってきて、ここに居ついてしまう長身の元気な女性。-日本人離れした顔立ちがこの映画にはとてもしっくり!
居ざるを得なくって居る、おとなしくて不思議な女性。-話さなくてもお辞儀だけでその人なりがわかってしまう!
そこにフィンランド人が絡み合って何とも言えない時間が流れる。マッティ演じるコーヒーにまつわるエピソードを語る彼は、カウリスマキの過去の無い男にも出演してる。渋さだけでも存在感抜群。
食事の出てくる映画は見ているだけでも楽しくなる。さらに日本食を食べてもらって、感嘆の声が聞こえてくるとなんだか鳥肌がたってしまう。コーヒーひとつでもそこの時間の流れは変わっていく。シナモンロールひとつでも、おにぎりひとつでも。
固定ショットが多用されていて、パーンやズームにとても意味を持たせているよう。カメラを固定することで、出てくる人物が強調されているのかな?景色が、カフェが、きれいに写るからかな?
やっぱりカウリスマキの映画を思い浮かべる。でもあの暗さは微塵も感じない。
監督、荻上直子の作品はバーバー吉野しか見たことないけれど、この人の感性、人物の描き方はほんとに素直で曇りが無い。
ほんとに素敵な映画!